ロングステイ観光学会で2025年度に活動する分科会が採択されましたので、お知らせいたします。
〇肘折温泉におけるロングステイヤーの行動実態調査
代表申請者:花井 友美
肘折温泉は山形県最上郡大蔵村に位置する歴史ある温泉地で、開湯の歴史は807年にまで遡ると言われている。山間の静かな環境にあり、昔ながらの木造旅館や共同浴場が立ち並び、レトロな雰囲気を残しており、癒やしと歴史を感じられる場所として親しまれている。肘折温泉は湯治場としての歴史から、訪れる人々は比較的長く、また繰り返し滞在する傾向がある。また、肘折温泉では湯治文化とワーケーションを組み合わせた「肘折バカンス」というロングステイ・プログラムを推進している。そこで本分科会では、肘折温泉を訪れる観光者の行動実態を明らかにすることで、ロングステイを促す要因となる肘折温泉の魅力や環境的条件を特定することを目的とする。こうしたロングステイ傾向の背景を解明することにより、他の地方温泉地におけるロングステイ型観光の促進に資する知見を導き出すことが期待される。
本研究の目的を達成するために、2つの調査研究を実施する。第一に、「肘折温泉パスポート」のデータを用いた定量的分析を行う。「肘折温泉パスポート」は、来訪者が旅館や飲食店、共同浴場などの施設を利用するごとにスタンプを集める仕組みであり、パスポート申請者の属性や滞在日数などのデータが蓄積されている。これらのデータを統計的に分析することで、滞在者の訪問頻度や滞在期間、行動パターン等を明らかにする。本データの提供にあたっては、すでに木村裕吉氏(元肘折温泉卿振興株式会社)より利用許可を得ている。第二に、肘折温泉において一定期間以上滞在するロングステイヤーを対象に、半構造化インタビューを実施することで、彼らの動機や滞在中の過ごし方、地域との関わりなど、定量的分析では捉えきれない側面について質的に把握する。
本分科会による研究の成果は本学会の学術大会等で発表し、公表する。