Academic Society of Japan for Long Stay Tourism

発起人代表挨拶

発起人代表挨拶

長期滞在型・ロングステイ観光学会
発起人代表 岡本 伸之

 観光現象を対象とする学術的な研究が始まったのは、20世紀に入ってからのヨーロッパであった。前世紀からの移動手段の発達による交通革命を経て、観光往来を含む人の移動が旅行者の受け入れ国に外貨をもたらすことが経済学者の関心を集め、経済学的な研究が始まった。研究成果は日本の政府も関心を寄せ、1930年には鉄道省の外局として国際観光局が開設された。国際観光局は、1930年代にイタリアやドイツで刊行された観光研究の専門書を翻訳して刊行し、日本の研究者も関心を寄せる契機となった。そうした中で、観光局の井上万寿蔵による『観光読本』(1940)、大分大学の田中喜一が観光局による5点の翻訳書の内容を集大成した『観光事業論』(1950)などが刊行され、観光研究の黎明期を迎えた。

観光は20世紀に入ってから益々盛んになった。国際連合は観光振興のための国際協力の必要性を訴え、「観光は平和へのパスポート(Tourism; Passport to Peace)」のスローガンを掲げて1967年を国際観光年とする決議を1966年に行った。その1967年に立教大学は社会学部に4年制大学としてはわが国初の観光学科を設置し、1998年には観光学部として独立させ、同時に大学院を設置して観光学の博士号を授与できる体制を整えた。文科省によればわが国では観光関連の学科・大学院を持つ大学が2009年現在49校存在する。

日本の観光は、高度経済成の波に乗ってまず国内旅行が盛んになり、1964年に観光目的の海外渡航が自由化されてからは海外旅行も盛んとなった。2003年、当時の小泉純一郎内閣総理大臣が所信表明演説の中で初めて「観光立国」に言及し、以後、観光は2007年の議員立法による観光立国推進基本法の制定、翌年の観光庁の設置、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の展開等、政府の重要施策の一翼を占めるに至った。現在も安倍晋三内閣により「観光立国アクションプログラム2015」が展開され、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催に向けて訪日外国人旅行者数2000万人の高みを目指すことになっている。

このように見てくると、わが国の観光振興は政府自治体による振興策、観光産業を支える人材育成の両面で順風万帆の趣にあるといえよう。しかしながら、観光の実態は、必ずしも予断を許さない面がある。問題の所在を国際観光と国内観光に分けて考えると、国際観光は訪日外国人旅行については上述したが、日本人の海外旅行が2000年代に入ってから、2001年の同時多発テロ、2003年のSARS、同イラク戦争の影響等により減少し、2011年は東日本大震災の影響が懸念されたものの翌年は過去最高を記録し、しかしその後は減少傾向が続いている。

日本人による国内観光については今後学術的な研究が求められる問題が山積しているものの、大きな問題は目的地における滞在日数が短いことである。観光庁によれば、外国人旅行者を含む国内観光旅行者数は2014年の速報値で約4億7000万人とされるが、泊数は約3億9000万人泊に過ぎない。2014年版観光白書で日本人を対象とする調査結果(2013年の暫定値)を見ても、国内宿泊観光旅行の回数は1.43回、宿泊数は2.35泊と推計されている。1回当たりの泊数は1.64泊と計算される。国内観光の実態は宿泊を伴う場合でも1泊2日が過半を占める実態にあるといえる。

このように見てくると、わが国の観光が直面する研究課題として、なぜ1泊2日では問題なのかを含めてロングステイに象徴される「長期滞在型観光」の可能性を模索する必要性があるのではないか。わが国ではすでに10団体を超える観光関連の学会が存在する中で、新たに「長期滞在型・ロングステイ観光学会」を立ち上げようとするに至った理由はそこにある。すでに既存の観光関連学会に加入しておられる各位に加えて、これから長期滞在型という新たな視角から観光研究を志す同士の参加を謹んでお誘い申し上げる次第である。


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